あなたの寄付はもしかしたら迷惑がられてるかも?

喜ばれない寄付もある

以前、ある児童養護施設の職員が毎年恒例のバザー準備に追われていた時のこと。その職員はこんなことを言っていました。

「地域の方が、バザーのためにいろんな物を寄付してくれるのはありがたいんですけど、状態の悪い物がたくさん送られてくるし、職員がその整理や廃棄に追われて大変。バザーで稼げる金額って今はたいしたことがない、手間ひまを考えると、もう止めたほうがいいのではないかという意見も出ている。」

私もいくつかの児童養護施設で開催しているバザーに参加したことがあります。しかし、正直、バザーで購入したくなるものって少ないです。子どもに買うお菓子ぐらいのものでしょうか。バザーのために多忙な職員が費やす時間を考えると、得られる金額は見合ってないと思います。

また、ある企業から、企業名が胸のあたりに大きく入った真っ赤な大人サイズのトレーナーを段ボールで寄付された施設もありました。「子ども達に使ってほしい。」ということらしいのですが、そこの施設長は「今の子ども達、みんなでお揃いのトレーナーなんて寝間着でも着ないですよ….。」と私に向かって思わず苦笑い。いえ、一人でも、企業名がでかでかと入った真っ赤なトレーナーなんて、ごめんだなあ…。かくして、これも施設のただでさえ忙しい職員が処理する羽目に陥るのでした。

児童養護施設は確かに財政的に苦しいところが多いです。こんな話をすると、すぐ「援助をしよう」「衣類をあげよう」と考える人がいるのですが、必ずしもそれがいいとは限りません。前述した例のように、特に物品の寄付をする時は、相手の立場を考えなければなりません。いらなくなったものを横流しするような感覚では迷惑がられるのがオチです。

食料品の寄付

しかし、一方で受け入れられている寄付もあります。食料品の寄付です。どこの台所にもあるような、塩、砂糖のような毎日の料理に欠かせない調味料、カレールーのようなインスタント直品、保存がきくツナ缶、ホールトマト缶のような缶詰、のり、そうめんのような乾物は、私たちがいただいたって重宝しますよね。児童養護施設はそれぞれ国の補助金があるので、食べる物に困る施設はありませんが、例えば、寄付によって浮いた資金を子ども達の進学資金としてプールするなどして役立てている施設もあるようです。

カーブスジャパン(株式会社コシダカホールディングスの子会社)は2007年から毎年一度フードドライブ運動を実施しています。

フードドライブとは、家庭にある食料(缶詰やレトルト食品などの保存食品)を募り、食料を必要としている人たちへ寄付する活動です。日本では聞き慣れない言葉ですが、アメリカではメジャーな活動で、1960年代にアリゾナ州フェニックスで始まり、今では既に全米に定着しています。全米フードバンク・ネットワークが、年間に貯蔵し供給する食料の量は、およそ90万トン。これらの食料は、アメリカ国内で毎年2,500万人の食料を必要としている方へと届けられているそうです。

アメリカのカーブスインターナショナル社では、このフードドライブに10年前から取り組んでいますが、日本においても地域社会への貢献が大切なテーマであると考え、2007年からフードドライブを実施、児童養護施設の他、ドメスティックバイオレンスから女性を守る保護施設や協会等に食べ物が届けられています。

一石二鳥の「セカンドハーベスト」

また、NPO法人セカンドハーベストジャパンは、児童養護・母子支援・障害者支援等の福祉施設や生活困窮者などに食品を提供するため、食品企業などと連絡を取り合い食を通じた新しい社会作りを目指しています。

セカンドハーベストとは、「2度目の収穫」という意味。1度目の収穫(通常の市場)からもれてしまったもの、だけどまだ充分に安全に食べられる食品を2度目に収穫し、捨てられてしまうかもしれなかった食品に命を与えようという意味で、2009年には、約500社から食品の提供を受け、関東中心とした全国約500福祉施設や団体に食品の提供を行うまでに順調に活動を拡げているそうです。

豊かな時代でも、自分には不要な物が別の場所で再び役立つことがあります。そのためには、相手の立場を充分に考え、必要な物を寄付することが大切になってきます。それは、一見難しいようにも感じますが、たとえどういった立場に置かれていようとも、相手も同じ人間ということを忘れなければ、自然になされるはずだと思います。


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