給食費未払い問題は「親たたき」?滞納率50%という数字の真実とは

小学生の子どもを持つお母さん達がこんな話をしていました。

「ねえ、知ってる?給食費を払わない親って50%以上いるんですって。」「えー、50%?!クラスの半分が払わないってこと?」「そう、なんだかそういうこと聞くと、払っている方が払い損って気持ちになっちゃいそうよね。」

給食費未払い50%、という数字のからくり

クモノス読者の中にももしかしたら同じように思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。ところが、実はメディアでもよく引き合いに出される50%という数字は「給食費を払ってない保護者が1人でもいる学校の割合」ということで、全体のうち半数が給食を払っていないわけではありません(そりゃそうですよね、いくらなんでも…)。

でも、意外とこんな勘違いをして、未納の規模を実態より大きく考えている人ってたくさんいるようなのです。同時に、そもそも、一人でも給食費を払ってない保護者がいる学校の割合を大々的に報じる意味ってどれほどあるんだろうか…..と考えてしまいます。それより給食費を払えない生徒の全体に占める割合、あるいは全体に占める未納額の割合のほうが実態を正確に表していると思うのですがどうなんでしょう?ちなみに、実際に未納となっている生徒は1.2%、金額にして0.6%に過ぎないそうです。滞納額25億円とか言われちゃうと、庶民の感覚では「えー、そんなに!!」とびっくりしちゃいますが、それでも未納額の率はたかだか0.6%、99.4%は払っているわけです。

「非常識な親」が強調されすぎる報道

「なーんだ、そのくらいならいつの時代もいそうよね….。」と思える数字じゃないですか、これって?さらに、「払えるのに払わない親」がことさら強調されている報道に対しても違和感があります。実際の現場感覚として、いくらなんでも「携帯料金は払っているのに給食費を払わない」ような親が、それほど多くいるとは思えません。これだけ不況だと経済的に困窮している家庭も増えているでしょうから、0.6%のうちほとんどは経済的理由によるものであり、やはり報道されるような非常識な親っていうのはごくごく少数なのが実態なのではないでしょうか。

このように見ていくと、とんでもなく非常識なダメ親を強調しているという意味で、「クレームだけでは解決しない! モンスターペアレントを生み出さない教育環境」で書いたようなモンスターペアレントに関する報道と共通した姿勢を感じます。「公平性が保たれないと給食制度の存続が危うくなる」と言う人もいるようですが、100%の納付率って現実的にありえない。先に出した親の会話にもあるように、誤解を生むような報道で「そんなに多くの親が払ってないなら、払っているほうが払い損」というムードが漂うことの方が心配になります。

大人も知的な対応をすることが必要

ところで、私が子どもの頃も給食費を滞納している親もやっぱりいたと思うのですが、そういうことって大人は子どもの世界に持ち込まない良識があったように思います。給食費を払っているかどうかなんて、所詮子どもには関係のない話、どうにもできないことです。イタリアでは、給食費を未納にしている小中学生に対し、給食費からおかずを除き、サンドイッチと水だけを出すという異例の措置をした市があるそうで…..。

これに対しては、本国でも賛否両論のようですが、どちらにしろ、やっぱり子どもには関係のない話。「かわいい子どもがこんな非情な対応をされてどんな気持ちになるか考えてほしい。」ということなのでしょうが、もし仮にモンスターペアレントが未納しているのであれば、そもそもそんな全うな気持ちを抱くかどうか自体あやしい。非情な手段に出た市に対する攻撃心が生じるだけのような気がします。そして、結局傷つくのは子どもだけ、しかも一生消えない心の傷を負うのです。

こういう報道を見ると、大人に余裕がなくなっているなあと思います。悪いやつには何をしてもいい、みたいな雰囲気です。正義が人を傷つけることってたくさんありますよね。牙を持った正義が関係のない子どもにまで向けられてしまう。子どもはそこまで親に人生を左右されなくてはならないのでしょうか。

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